デラホーヤ観戦記(2007年)

THE WORLD AWAITS

会場の皆が一斉に立ち上がった。
静まりかえった場内にメキシコ、続いてアメリカ国歌の独唱が始まった。
ある人たちは右手を左胸に当てて聴き入っていた。
厳粛な雰囲気から一転して陽気な入場曲が流れてきた。

一瞬、デラホーヤの入場を予感させたが花道に姿を現したのは挑戦者だった…
満面の笑みをたたえたメイウェザーはソンブレロを被り、
身に着けているガウンはといえば緑に白と赤。言わずと知れたメキシコカラーである。
もう違和感ありあり…誰しもが意表をつかれた。
たちまち、あちこちから笑いが漏れていた。
メイウェザーにとってはメキシコ系のデラホーヤをおちょくっているつもりなのだろう…
スクリーンに映し出されたメイウェザーの親父の表情が印象的だった。
「おいおい見ろよ、うちの息子も何を考えてんのやら…困ったもんだ」
とボヤいているように呆れ返っていた。

一方のデラホーヤは赤一色のシンプルなガウンでキメて登場した。
常に厳しい表情が試合への決意を窺わせていた。
リング上で右手を一直線に突きだす勇姿に熱狂する観衆を見ると、
現在のボクシング界でデラホーヤの人気に匹敵する者がいないのを実感する。